あの億万長者も、バイナリーオプションの常連だった!

「ここか……」
取材班は天を仰いだ。高度に発展した資本主義社会の象徴とも言える、銀色のビルがそびえ立っている。都心に存在する、資産総額が数十億円の者のみが住むことを許されるという噂の、知らぬものはいないあの高級マンションである。
取材班は、30代の若き億万長者として連日マスコミにその名を轟かせている、X氏への単独取材を申し込むことに成功した。フロントでアポがあることを告げたあと、エレベーターで最上階に上る。ヨーロッパの宮殿を思わせる豪奢な装飾品に目を奪われながら、X氏の部屋へとたどりついた。
「やあ、お待ちしていましたよ」
出迎えてくれたX氏は、ジーンズにTシャツというカジュアルなスタイルである。ただ、窓から見える大都会の夜景と、室内のさまざまな美術品は、彼が富豪であることを示している。
「僕の最近のお気に入りは、バイナリーオプションですね」
彼の投資手法について話が及ぶと、X氏は最初にそのような言葉を口にした。
「バイナリーオプションですか。申し訳ありません、我々は不勉強でして……」
年長の記者が苦笑しながら頭を下げた。予想通り、X氏はまるで子供のように無邪気に微笑んだ。取材班は全員経済誌の記者であり、バイナリーオプションにも詳しい。だが、相手に思う存分話してもらうことこそ、上手な取材のコツである。
「僕が株で成功したことはご存じかと思いますが、最近はデイトレードから長期投資に切り替えているんです。もう十分稼ぎましたから、社会に貢献できる企業に投資することにしたんですね。ただ、昔のような手法も名残惜しいですから、短期取引が可能なバイナリーオプションを選択したというわけです」
「なるほど。Xさんが得意とするテクニックを使うことが可能なんですね」
「そうです。何しろ、僕ほどになるとトレードが呼吸と同じく生きることの一部になってしまいましてね……。バイナリーオプションは、余剰資金の運用にはぴったりなんですよ」
X氏の話は尽きることがない。取材班は、彼ほどの逸材と話せることを幸福に感じた。

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